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目当ての児童から、奪おうとし彼女に阻止されたハンカチ。
それを現在所持しているのは、調査対象者である蘇芳ではなかったか。
だとすれば大人びた雷花姉ぇに対しての、冷遇も筋が通る。
そして同年代と比較して低身長である、私への心温まるおもてなしの理由も。
物証として、手近な袋を一つブレザーの内ポケットへ押し込んだ。
後はパソコンに差しこんだ、USBメモリの回収を残すのみ。
ドアを閉じて、そろそろ階下に戻ろうとドアノブから手を話した瞬間。
ぎしっ、と背後でフローリングの床が軋む音が聞こえた。
ぞっとして振りかえり、背筋に氷水を浴びたような寒気を覚えた。
笑顔の仮面を貼りつけたような、不自然に強張った顔の本紫と目があった。
「水花ちゃん、トイレは一階だよ」
「迂闊だった。先に場所を聞いておくべきだったな」
すっと彼女は目を細めたが、私が二階にいる理由をしつこく追及してくることはなかった。
「さあ、お菓子の準備が出来たよ」
「すまないが、用事を思い出したのだ。茶会は日を改めよう」
「どうしてそんな悲しいこと言うの?」
途端に腕を万力のような力で、握り込まれた。
「飲み物なら、大抵のものはあるのに。
水花ちゃんの好きな飲み物、知りたいな」
「――ではホットミルクを頼もうか」
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