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やんわりと手を払いのけるふりをして、サイコメトリーを発動した。
人として歪んだ、どす黒い感情が私の心を乱す。
もはやこいつが黒であることに、疑いの余地は無い。
居間のソファで、建前ばかりのお茶会が始まった。
なぜか身を寄せ合うように座ってきた本紫は、オレンジジュース。
私の牛乳は、わざわざ目の前でパックを開けてくれた新品だった。
だが電子レンジで温められた後のミルクは、口に含むとなぜか苦い味がした。
「この家にティーカップは無いのか?」
私は立ちあがり、台所を目指した。
「世話になりっぱなしでは、気が引ける。
私直々に、紅茶を淹れてやろう」
「ごめんね。茶葉は切らしているの」
「窓の外に自販機があるだろう。
やむを得ないから、出来あいで代用しよう」
警察に一報する隙さえあれば、あとは時間を稼ぐだけで良い。
「駄目よ。
外は寒いのに、風邪をひいたら大変」
やはりそうは問屋がおろさないのだった。
しかしある理由の為なんとしても、自販機に近づく必要がある。
ふと、雷花姉ぇが読んでいた少女漫画のワンシーンが頭をよぎった。
嫌悪感があるが、なりふり構っていられる状態では無い。
私は本紫の、冷たい手をぎゅっと握った。
「手をつないでいけば、寒くないだろう」
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