第八席 日用品連続盗難事件

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 やんわりと手を払いのけるふりをして、サイコメトリーを発動した。  人として歪んだ、どす黒い感情が私の心を乱す。  もはやこいつが黒であることに、疑いの余地は無い。  居間のソファで、建前ばかりのお茶会が始まった。  なぜか身を寄せ合うように座ってきた本紫は、オレンジジュース。  私の牛乳は、わざわざ目の前でパックを開けてくれた新品だった。  だが電子レンジで温められた後のミルクは、口に含むとなぜか苦い味がした。 「この家にティーカップは無いのか?」  私は立ちあがり、台所を目指した。 「世話になりっぱなしでは、気が引ける。  私直々に、紅茶を淹れてやろう」 「ごめんね。茶葉は切らしているの」 「窓の外に自販機があるだろう。  やむを得ないから、出来あいで代用しよう」  警察に一報する隙さえあれば、あとは時間を稼ぐだけで良い。 「駄目よ。  外は寒いのに、風邪をひいたら大変」  やはりそうは問屋がおろさないのだった。  しかしある理由の為なんとしても、自販機に近づく必要がある。  ふと、雷花姉ぇが読んでいた少女漫画のワンシーンが頭をよぎった。  嫌悪感があるが、なりふり構っていられる状態では無い。  私は本紫の、冷たい手をぎゅっと握った。 「手をつないでいけば、寒くないだろう」
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