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効果はてきめんだった。
どうにか自販機まで、辿り着くことができたからだ。
親に連れられた子ども、という見てくれではあったが。
自販機をじっと見つめながら、私はしばらく立ちつくしていた。
「どうしたの。
紅茶飲料なんて、どれでも同じでしょ」
「バカな。
嗜好品は、こだわりが大事なのだ」
本紫にせっつかれて、増量中と書かれたホットレモンティーのボタンを押す。
舐めるような目線に監視され、スマホを使う余地はない。
更に土地勘の無い中、無理に逃げ出す事も得策でないと悟った。
台所に戻った私は、手を洗うとティーカップセットの捜索を命じた。
本紫が食器棚を漁る後ろで、私は紅茶飲料や牛乳を準備するなどしミルクティーの準備を始める。
本紫が差しだしたティーポットへ、パックから牛乳を注ぐ。
ポットをガスコンロにかけ、沸騰する直前に火を止める。
もちろんティーカップを、事前に湯で温めておくことを忘れなかった。
ポットに多めの砂糖と、レモンティーを加え完成だ。
「私特製ロイヤルミルクティーだ。
口に合うといいのだが」
「私だけの為にわざわざ? 嬉しいわ」
文字通り、本紫は紅茶をがぶ飲み。
ポットいっぱいのロイヤルミルクティーは、すぐ空になった。
それにしても、こいつの話は内容が無く退屈だ。
ほどよく効いているエアコンと気疲れも手伝ったのか。
本紫の声が徐々に遠のく。
たまらずソファにもたれかかった私は、瞼を閉じてほどなく意識を失った。
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