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細身の人物は目当ての番号から、膨らんだ茶封筒を取りだした。
こそこそと人目をはばかるように、茶封筒を隠そうとする人物に声をかけた。
「おい!」
びくっ、と体を震わせて振りかえったその人物は――
「こ、小鷹女史?」
「わっ。水花ちゃんに雷花ちゃん?
どうしてここに」
雷花姉ぇが目を伏せ、ぼそぼそとつぶやく。
「人の趣味のことですもの。
私が口を出す問題では、ありませんわね」
「私達のことも、変な目で見ていたのか?
このロリコンメイドめ」
ええっ!? と驚いた様子で、あたふたと小鷹女史は弁解を始めた。
「違うの、二人とも。
会社に、小学生を狙った連続窃盗事件被害者の、親御さんが来てね。
偶然、失くしたはずの娘のハンカチがネットで売られていることに気付いたの。
だから犯人を調査して、私に引き渡して欲しいと言うのよ。
最初は私の担当だったけれど、グレーだし危ないからお断り。
資料は真っ先に捨てたのよ」
「ではこの私書箱は?」
「会社用よ。
担当者が、今の時間どうしても受け取ることができないから。
私が代理に来たというわけなの」
「なんだそんなことでしたのね」
私と雷花姉ぇは、たまらず笑いだした。
「それにしてもどうして、二人はこんな場所にいるの?」
「企業秘密だ」
「夕食はビーフシチューですのよ。
小鷹さん、急いで帰りましょう」
私は雷花姉ぇに目配せして、三人で家路を急いだ。
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