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館内併設のレストランには、午後の陽光がさんさんと降り注いでいた。
窓際の席まで案内され、一面ガラス張りで中庭の芝生がよく見える。
すでに雷花ちゃんが、席に着いていた。
隣には上品な身なりで、六十後半ほどの白髪の男性。
既知の中と見えて、にこやかに会話を交わしていた。
白髪の紳士は、私と水花ちゃんに気付くと立ちあがった。
「初めまして。
館長の桑茶督(くわちゃおさむ)です。
お父様と仕事上のご縁がありまして。
時々こうして、招待状を送らせて頂いています」
私は自己紹介を済ませると、早々に席へ着きナプキンを膝へ置いた。
見計らったようなタイミングで、キノコの濃厚なクラムチャウダーが運ばれてきた。
食事の間中、館長は丁寧に噛み砕いて、美術品の解説をしてくれた。
しかし心なしか、彼の表情は曇っていた。
雷花ちゃんが、新しい展示品である屏風の話に水を向けて、ようやく口数が多くなる始末。
「ご気分でも優れませんの?」
「いや実は、一休の屏風についてなんだが」
館長は曖昧な笑みを浮かべた。
「一か月前ですか。
我が館で引き受けてからというもの、奇妙な出来事が続いてね」
「まあ。それは大変ですわ」
その時私は長女のまんまるい瞳に、小さな炎が灯ったのを見た。
「小鷹さんは、優秀な素人探偵ですの」
突然名前を呼ばれ驚いた途端、スープが気管に入り激しくむせてしまった。
「どうでしょう。
一度お話だけでも、してみては」
「それは心強いですなあ」
助けを求めるべく、水花ちゃんを見る。
口元がにまにまと、楽しそうに歪んでいた。
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