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「そろそろ甘い物が、食べたくなってきたぞ」
「無論、すぐにお出しするとも。
ケーキがいいかね? それとも杏蜜かい?」
スイーツは非常に美味だった。
事件の話を差し引いたとしても。
ランチを堪能した私達は、事務所を兼ねた館長室へ移動した。
「屏風を買い取ってからというもの。
必ず夜中二時に、特別展示室の警報が鳴ってしまうのです」
館長は控えめに、溜息をついた。
「守衛が急行しても、現場には誰もいないのです。
侵入どころか、何かが盗まれた形跡も無しときた」
「機械が故障しているのでは、ありませんか?」
私の所属する事務所でも、退勤後には各部屋にセンサーをセットしている。
ここだけの話、事務所部分は十一月から、とある理由でオフになっているのだが。
「専門業者に検査して貰いました。
異常は無いそうです」
「センサーの種類は、なんでしょう」
「室内用赤外線センサーですよ。
人の体温と、周囲の温度差を検知します」
館長は天井の隅を、指さした。
白いまんじゅうを逆さにしたような形の、半球体が取りつけられている。
「丈夫な縄を用意しておいたほうが、良さそうだな」
何がおかしいのか、水花ちゃんがくつくつと笑い声を立てた。
館長が苦笑いをする。
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