第九席 抜け出す虎の謎

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「カードキーを盗むことは、できそうですか」 「詰所の鍵を掛けたボックスに、予備が保管してあります。  閉館すると、正面入り口と通用口は当番の職員によって施錠される。  施錠前も必ず、残っている客はいないか巡回して周る。  だから潜伏することは、できませんよ」 「侵入にはまず、鍵のかかった館内へ。  次に特別展示室までのセンサー。  と二種類の関門があるのですね」  侵入者がいたとすれば、どうやって施錠された美術館に侵入できたのだろう。  それも特別展示室のセンサーしか、ひっかからず何の痕跡も残さないで。  ふうん、と私は考え込んだ。  ここで館長は、右手の年季が入った腕時計を見た。 「もうこんな時間か。  私はここで失礼するよ。  質問があれば、何でも香染に聞いてください」  そう言い置いて、館長は小さな鞄を持つと慌ただしく通用口へ向かった。  入れ違うように、よれよれのスーツを着たくせ毛の男性が入室した。  三十歳前後のまだまだ若そうな人だった。  が、疲れからか目の下にはクマが出来ている。  良く見ると顎に、無精ひげが生えたままになっていた。  見栄えの悪いことこの上無い。  彼はスチール机に置かれた、コンビニ袋を恨めしそうに見つめた。  「嫌になるよ。  休憩も取らせずに、人をこき使いやがって」 「良かったら、食事を取って下さい」  
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