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ハウスメイドも不規則な休憩なので、同情心が湧いてきた。
「桑茶の知り合いにしては、良い人だな。
じゃあ、お言葉に甘えるとするか」
言うが早いか、おにぎりのパックを勢いよく開封し始めた。
「開閉館の作業は、誰が行うんだ?」
水花ちゃんが、口を挟んだ。
香染さんは、おにぎりを貪るのに夢中だった。
おそらく誰と会話しているかも、分かっているか怪しい。
「そりゃあ俺達学芸員さ」
「意外だな。
客の誘導や放送は、守衛がしているものと考えていたが」
「よくぞ言ってくれたな」
香染さんは、一リットルの水ボトルに口をつけて、らっぱ飲みした。
「あいつは学芸員を、雑用と勘違いしているんだ。
やれ掃除だの、窓の施錠確認だのって。
さっさと帰りたいのに、一人だけ残されて不公平だ」
「では守衛さんは、いつ出勤して来ますの?」
ようやく一息ついた香染さんは、ここで初めて雷花ちゃんに目を向けた。
「ぼちぼちじゃないか?
午後五時から、勤務開始だよ。
桑茶のやつ、給料をけちっているのさ。
閉館ジャストまで、仕事はさせない腹積もりなんだ」
「香染さんは、特別展示室の件をどうお考えですの?」
「どうだっていいさ。
近々辞める予定だからね」
彼はコンビニ袋に、ペットボトルとおにぎりを梱包していたビニールを、分別せずに詰め込んだ。
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