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「いくらなんでも、美術品に触ることはできない。
サイコメトリーは、使えないぞ」
「じゃあ雷花ちゃんに、お願いしようかな」
彼女は嬉々として、トートバッグからタブレットを取りだした。
「喜んで、お手伝いさせていただきますわ」
すぐにペイントソフトが展開。
真っ白い画面を表にして、雷花ちゃんはすっと瞳を閉じた。
危なげなく、じわじわと水が染み出すように、画像が現れる。
「何だこれは?」
水花ちゃんが顔を曇らせ、目を細めた。
ソートグラフィーで描き出された場所は、意外にも会議室だった。
照明を切った部屋で、スクリーンだけが煌々と明かりを放っている。
脇では千博さんが、レーザーポインターを手に説明をしている。
館長と副館長が、最前列の会議用テーブルに陣取り、言い争っている。
列の後方には、辛うじて写り込んでいた香染さんが、退屈そうに目をこすっていた。
「ちょっとスクリーン部分を、拡大してみようか」
私が画面をタップすると、スクリーンには画素の荒い文字が現れた。
「館長存続の、メリットとデメリットねえ」
「どうやら、館長の座を巡って争っているらしいな」
「でも館長の座と、一休さんの屏風にどういう関係があるのでしょうか」
雷花ちゃんの問いには、誰も答えることができなかった。
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