第九席 抜け出す虎の謎

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 学芸員の血が騒ぐのか、意外と丁寧な解説が始まった。 「光線透過率は、ガラスをも凌ぎ見栄えがいい。  さらに耐衝撃性も抜群。  なんと、ガラスの十六倍もの強度を持つ。  水族館の巨大水槽に使われているのは、よく知られた話だな」  ぱちぱちぱち、と思わず拍手をしてしまった。  絵具のイメージが強かっただけに、目から鱗だ。  アクリル談義に花を咲かせているうち、屏風の前に到着。  雷花ちゃんが、心配そうに暗幕を指さした。 「少し空いていて、夕日が差し込んでいますわ」 「やべっ」  見上げると、採光窓を通して茜色の光が漏れていた。  天井のセンサーを通過し、屏風の端までしっかり照らし出している。  慌てて暗幕のスイッチを押し、位置を修正する学芸員長。 「桑茶に知られたら、どやされるところだぜ」 「まあ朝から開けっぱなしだったがな」  容赦なくばっさりと、水花ちゃんが切り捨てた。  翌日の朝、開館時間前だが私は美術館に電話した。  面倒くさそうな、香染さんの第一声が迎えてくれた。  彼に頼みこんで、ようやく館長に代わって貰った。 「昨日はどうも。  抜け出る虎の手掛かりを、掴む事はできましたかな」 「ざっくりとはね」  受話器のむこうで、ごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。
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