第九席 抜け出す虎の謎

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「言われてみれば。  倉庫にはケースもはしごも、置いていたはずだ」  館長が苦悶の声を発した。 「だが守衛の話では、現場へ急行しても侵入の形跡は無かったそうだが」 「それは本当です。  ヒントは採光窓を覆う、暗幕にありました。  恐らく夜中にセンサーが反応していた期間ずっと、隙間が空いていたのです」 「それが、どうしたというのかね?」 「昨日私達は窓から夕日が差し、センサーを照らしている光景を目撃しました。  誰かが意図的に、窓からセンサーが見えるよう暗幕を少し開けたのです。  高出力レーザーを照射し、誤動作させるために」  私は雷花ちゃんにウインクし、手掛かりとなった画像提供への感謝の意を伝えた。 「国内で製造されているレーザーポインターでは、出力が弱すぎて反応しません。  でも規制の無い海外製品であれば?   優に300メートルは届きます。  ただでさえ、タバコやマッチに着火できるほどの、高出力ですからね。  もちろん輸入販売は、法律で規制されています。  つまり犯人は  ①特別展示室のキーを持つ人物  ②最近海外渡航しており、現地で購入する機会のあった人物」  びしっ、と私は侵入者を指さす。 「若紫千博さん、あなただけです」  千博さんは動じること無く、ただ不敵な笑みを浮かべる。
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