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「で、寒くなってくると。
出勤前にエアコンを、タイマーセットするんですけど。
温風がセンサーを直撃して、警報が鳴っちゃうんですよね。
急激な温度変化で、反応する。
だからこの時期は、わざと夜間もオフにしてあるという訳でした」
話し終えると、部屋に警察官が入ってきて、千博さんに手錠をかけた。
特別展示室が点灯すると警察へ通報するよう、館長経由で守衛さんに指示しておいたのだ。
「なぜこんなに、手の込んだ真似をしたのだ?」
珍しい動物でも見る様な目で、水花ちゃんが千博さんを見つめる。
「海外にはね。
日本の美術品を、手段を選ばす手に入れたいマニアがいるの。
そんな一人と出張中に偶然知り合い、屏風の話を出した。
すると取引を持ちかけられたの。
一休の屏風を盗んでくれれば、多額の報酬を出すとね」
「いや、そういう意味ではなくてだな」
こほんっ、と水花ちゃんが咳払い。
「美術館は資金難なのだろう?
最初からマニアに、高値で売りつけてやれば良かったではないか」
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