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 けれど、この点に関してはどうも譲る気が全くない事が読み取れたので、秋良はあまり気にしない事にさっさと決めてしまった。  社長の息子という立場だからだろうか、自分より年上の大人達から敬語を使われる状況に慣れている事もあって、そこまで違和感が強い訳でもない。 「すみません」 「謝らなくてもいいけどさ」  仕事以外の関係者から余所余所しくされると、少し寂しい。というのは子供っぽいだろうか。  拗ねた様な表情になってしまった秋良に孝則はぺこりと頭を下げたが、呼び方や話し方を変える気はやはりないらしい。  再度すみませんと頭を下げる孝則に、いいからと手で制してそろそろ話を本題に戻そうと話を促す動作を付けると、孝則も了承したのだろう顔を上げて先ほどの質問の意図を話し始めた。 「秋良様が私の事を御存じでなくても、私はずっと貴方の事を忘れた事はございませんでした。私は貴方に会う為にここに居ると言ってもいい」 「俺がガキの頃に、会ったことがあるって事か?」 「いえ、『江藤秋良』様にお会いするのは今日が初めてです」 「意味がわからないんだが」 「私と秋良様が関わりを持っていたのは、今から数百年以上前の事です。貴方はこの土地の領主で、私は貴方に仕える部下でした」 「は?」     
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