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「貴方はとても良い領主で、部下達にも領民にも好かれていました。あの日、隣国の裏切りに合いさえしなければ、きっとこの土地は貴方の統治の元、豊かで幸せな国になっていたことでしょう」
「ちょ、ちょっと待て」
「貴方は優しい人でしたから、誰一人戦いで犠牲にしたくないと仰って……自分の命を差し出す選択をしました。皆止めましたが、一度決めた事を簡単に揺るがす方ではなかった」
「…………」
「そして誰もいなくなった城で、御自害する直前。この桜の木の下で、私と約束をして下さったのです」
「もし来世と言うものがあるとしたら、またお前と共にありたいものだ……ってやつか」
「…………!」
秋良の制止に気付かない様に話し続ける孝則言葉に引っ掛かって、するりと飛び出してきた呟きは、繰り返され続ける夢の中で自分が「部下の孝則」に言った希望。
気付くと何気に言葉を紡いだ秋良を、孝則が驚いたように見つめていた。
それは、一番最初に孝則が秋良に気付いた時と同じように、嬉しそうなのに今にも泣き出しそうな(先ほどは本当に泣かれた訳だが)表情で瞬きもしない孝則に、時間が止まった様な空気に耐えられなくなった秋良の方が動くしかなかった。
「か、勘違いするなよ、夢の中の話とダブっただけだ。こんな桜の下で、戦国時代みたいな格好したお前に似てる奴と、まぁ…今お前が言ったようなシチュエーションになっててだな……」
「夢?」
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