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孝則が真剣な瞳で秋良を見つめ、その場に膝を折る。大切なものに触れる様に、秋良の右手を両手で包み込み、忠誠を誓う言葉を乗せた。
ますます夢の中の二人と状況がダブって、しばらく固まっていた秋良が慌ててその手を振りほどく。
「待て待て待て待て、俺はそういうつもりはないから!」
「そういうつもり、とは?」
「え、いや……とにかく! そういうのは困る」
どうやら恋人同士、という関係を望んでいる訳ではなさそうだ。
勘違いしかけた自分の思考に慌てながら、跪いたままの孝則を握られた手を利用して引っ張り上げ、立ち上がらせた。
どうして受け入れてもらえないのかと戸惑っている様子の孝則を、同じ目線で見つめて笑顔を作り。左手を秋良の右手を握りしめたままの両手にそっと添えて、握手の形にする。
「秋良様?」
「とりあえず悪い奴じゃなさそうな事はわかったよ。俺もこっちに来たばっかで知り合いもいないし……。友達ってことで、どうかな」
「そんな、恐れ多い」
「恐れ多くない。ここは二十一世紀の日本だ、お前が望んでいる関係の方がよっぽどおかしい」
「ですが……」
「じゃあ、ここでお別れだな」
「っ、待って下さい」
手を解いてさっさと孝則の前から消えようとする秋良を、孝則が慌てて引き留める。
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