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「……またか」
目をさました江藤秋良は、ベッドに身を沈めたまま白い天井を見上げ、そこに現代を象徴する照明器具を見て大きく息をつく。
ここはどこぞの桜の木の下でもなければ、重たい甲冑姿の人間などどこにもいない。
間違いなく、ぬくぬくとした布団の中でスウェット姿でごろごろと転げる事の出来る、文明の発達した現代日本だ。
けれど、そんな至福の時間から目覚めたばかりの秋良が溜息をつきたくなるのも、無理からぬことだと言えた。
この春。秋良が父親の会社から出向するという形で、地方にある子会社の社長に就任する事が決まって以来、特に赴任地に入ってからは毎日と言っても過言ではない位、同じ夢に捕らわれていたからだ。
夢の中の出演者達の姿から、きっと今よりずっと昔だろうという予想だけはつくが、ヒントが桜の木だけではそれがいつかも何処かもわからない。
わかるのは、自分の役割が「殿」と呼ばれている青年だという事と、その殿に仕えているらしい孝則という名の部下と……信じ難いが、上司と部下という関係だけではなく、どうやら恋人同士であるらしい事。
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