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何故、あの短い間にそこまでわかるのかと問われれば、殿と呼ばれていた青年と自分がリンクしているかのように、胸の内は手に取るようにわかったからだと言う他ない。夢とは、大概そういうものだ。
孝則の事を好きだという感情も、それが一方通行では決してなかった事も、最期の時に供に居られる事で心の安息を得られた事も、ただ理解出来てしまったというだけの事だ。
恐らく、敵に追い詰められたとかそういう事態なのだろう。二人に待ち受けているのは死という事実だけ。
諦めている様には見えなかったが、これから先の未来がない事を受け止めている様だった。
それは、あまりに非現実的で。けれど、夢の中の時代では当たり前に起こり得る事。
秋良には理解できない受け入れる事の出来ない状況なのに、夢という都合のいい理由で強制的にわからされてしまう。
あの青年にとっては、自分の命よりも大切な物がある事。そしてそれを守るためなら、何でも出来ると思っている事。
のしかかるその責任と義務は当然のことであって、何故自分がという疑問にも行きあたらない。
それでも、ただの夢だと片付けるにはあまりにも鮮明すぎて。けれど、何か出来る訳でも無くて。ただの傍観者として幾度も見せられる世界は、正直キツイ。
せめて、明るいシーンだったらよかったのに。いつもいつも、救われる事などないとわかっている永遠の別れに向かう瞬間を見せられるだけ。
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