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 一番の違いはその自然の量だろう。駅へと向かう道の途中でさえ、作られた自然ではない風景にぶち当たる。  反対方向へなど進もうものなら、少し歩くだけで見渡す限り田畑が広がり始めるに違いないけれど、それを確認する余裕は秋良にはまだない。  きっとこの条件下は、プラスに作用することばかりでマイナスに思う事などないはずなのだが、ばりばりの都会っ子である秋良にとって未知の環境である事も確かで、まだ戸惑いの方が大きいと言わざるを得ないのだ。  今回は近隣の散策も兼ねているから、引っ越してから幾度となく往復した駅前への道のりではなく、いつもとルートを変えてみる事にした。  ただ、駅と反対方向へ進むと目標とする朝食兼昼食を取れるような飲食店が見つかる可能性が低くなる事は予想がつくから、遠回りをして駅を目指す事にする。  緩い歩調で道を辿っていると、通りがかりの公園の先に小高い丘が見えた。  何かの史跡なのだろうか、子供の遊ぶ遊具があるわけでもなくただだだっ広い緑の公園は、春先の良い気候の割に訪れる人は少ない様で、ゆっくりと散歩を楽しむには気持ち良さそうだと感じ、少し食事を後回しにする事にして秋良は迷うことなくその公園に足を踏み入れた。  なんとなく最初に見つけた丘へと足が向く。     
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