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 みそ汁の具などあっただろうかと持ち主である秋良でさえ首を傾げるほどだ。  食パンはあったはずだから、特におかずがなくてもトーストにするだけで済んで簡単だっただろうに、秋良が二日酔い気味になっていることまで考慮の上、和食にしてくれたらしい事に、恐れ入るしかない。 「悪い。俺が先に潰れたから帰れなかったんだよな」 「いいえ、最初からそういうお話でしたから。私の話を真剣に聞いていただけて嬉しかったです」  その補完というか殿サイドの夢を今まさに見た、とはさすがに言えなかった。 「うん、まぁ……。いろいろ驚いた」 「すみません」 「いや、聞きたいと言ったのは俺だ。それに、お前がどれだけ殿様の事を大事に思ってるかはわかったつもりだから、想い出を否定したりはしないよ」  ただ、それを俺に当てはめられると困るんだけど。  あくまで友人として付き合っていきたいと暗に告げてみると、孝則は少し寂そうな笑みを浮かべながらも「もちろんです」と頷いた。  その答えで、眠りに落ちる前に一瞬感じた唇の感触と、夢の中で体験したそれが酷似していたのは、気のせいなのだろうと言うことになる。     
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