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アンリエッタはまじまじとグレーズを見た。
爪先からくまなく、頭のてっぺんを揺れる髪の毛先まで。そして、幼子らしからぬ深い溜息を一つ吐き出す。
「マ……お母さんたら、よくもアンタみたいな汚いヤツを家に入れたわね」
「えっ! 汚い!? そんな馬鹿な! 僕、毎日ちゃんとお風呂に入ってますけど!」
くすんだ緑の、大きめのコートに、ワイドパンツを捲し上げている格好。これのどこが汚いのか。グレーズにはてんで分からない。
あちこちを探っているその様子を、アンリエッタは冷めた目で見つめていた。
「アンタ、とんでもなく馬鹿ね……」
「ん? 馬鹿? コラコラ、お嬢様がそんな言葉を使っちゃ駄目ですよ」
「その、お嬢様ってのをやめてもらえない? わたし、別に、お嬢様ってわけじゃないんだけれど」
グレーズの窘めに、アンリエッタは噛み付くように言った。
なんと、彼女はお嬢様というわけではない……では、その鼻につくような態度はなんなのだろう。
「親がただ、外資系の仕事をしてるから。なんか、えらい人らしいけれど。周りよりもちょっと大きなお家に住んでるだけだし。あんなプールだって、わたしは大嫌いだし」
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