1件目:馬鹿と天才は紙一重

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 何故だろう。いたいけな可愛らしい少女なのに、狡猾な詐欺師に見えてくる。その小さな唇からひっそりと言葉が紡がれた。 「あのね、わたしのジェニーを取り返して欲しいの」 「ジェニー?」 「えぇ、そうよ。わたしの可愛いジェニーがね、この前、盗まれちゃったの」 「なんだって!?」  ジェニーがなんなのか分からないのに、グレーズは大声で驚いた。アンリエッタが両耳に指を突っ込んで目をつぶる。 「うるさいわね……いい? わたしの可愛いジェニーをちゃんとわたしの元へ届けてくれたら、アンタを認めてあげるんだからね」  そう言うと、彼女はふふんと鼻で笑い、腕を組んでグレーズを見上げる。体は小さくとも、威厳だけは一丁前だ。  グレーズは頭を掻き、苦笑を浮かべた。少女の頼みとあらば、それが依頼というのなら、喜んで引き受けるのがレグルス探偵事務所の方針だ。  まぁ、仕事がなかなか舞い込まないから、という理由も含むのだが。 「……えっーと。それじゃあ、その、ジェニーってのがどんなのか教えてくれない?」  さすがに、見ず知らずのジェニーとやらを探すのは難解だ。  グレーズの困惑した声に、アンリエッタは「それもそうね」とあくまで上からの姿勢を崩さなかった。 ***  さて。  アンリエッタが言うには、ジェニーとは大きくふんわりとしたテディ・ベアだという。     
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