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『……ん』
短くも、何か見つけたようなエディの声。それを聞き逃さないグレーズはぐっと端末を握りしめる。
『……12番街、港……ああ、漁港にある缶詰工場。そこに、クマらしきものがある』
「12番街、缶詰工場……」
脳に刻むように反復すると、エディは「ああ」と嘆息気味に頷いた。
『だが、グレーズ。依頼人はあくまでローレンス夫婦。子供の面倒を見ることだ。クマ探しは仕事じゃない。分かってるよな?』
「勿論さ」
言われずとも、それくらい。
グレーズは自信満々に声を返した。
「僕の仕事はアンリエッタと一緒にいること。それだけだよ」
『分かってるならいい。じゃあな。俺は忙しい』
やや安堵した声音だが、すぐに彼は素っ気なく通話を切った。無情な電子音がグレーズの鼓膜にぶつかる。
「……ぐ、グレーズ?」
おずおずとこちらに寄ってくるアンリエッタ。気の強そうな眉を下げてグレーズのコートを握っている。まだ怯えているらしい。
――まったく、エディは……。
呆れを早々に打ち消して、グレーズはニヤリと口の端を伸ばした。満面の笑みで少女を見下ろす。
「アンリエッタ! ジェニーの居場所が分かったよ!」
「本当に!?」
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