1件目:馬鹿と天才は紙一重

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『……ん』  短くも、何か見つけたようなエディの声。それを聞き逃さないグレーズはぐっと端末を握りしめる。 『……12番街、港……ああ、漁港にある缶詰工場。そこに、クマらしきものがある』 「12番街、缶詰工場……」  脳に刻むように反復すると、エディは「ああ」と嘆息気味に頷いた。 『だが、グレーズ。依頼人はあくまでローレンス夫婦。子供の面倒を見ることだ。クマ探しは仕事じゃない。分かってるよな?』 「勿論さ」  言われずとも、それくらい。  グレーズは自信満々に声を返した。 「僕の仕事はアンリエッタと一緒にいること。それだけだよ」 『分かってるならいい。じゃあな。俺は忙しい』  やや安堵した声音だが、すぐに彼は素っ気なく通話を切った。無情な電子音がグレーズの鼓膜にぶつかる。 「……ぐ、グレーズ?」  おずおずとこちらに寄ってくるアンリエッタ。気の強そうな眉を下げてグレーズのコートを握っている。まだ怯えているらしい。 ――まったく、エディは……。  呆れを早々に打ち消して、グレーズはニヤリと口の端を伸ばした。満面の笑みで少女を見下ろす。 「アンリエッタ! ジェニーの居場所が分かったよ!」 「本当に!?」     
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