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「ここ、どこなの!?」
紫陽花の街は紫色だ。しかし、眼下に広がるのは空色。天と同じ色をしている。遠くを見渡せば、煙突がそびえる黒煙が。
「え? あぁ、中央街だよ。6番街から12番街へ行くには、真っ直ぐ突っ切ってしまえば早いの!」
その理論は分かりやすいのだが、あまりにも常軌を逸している。
風を受けているうちに、中央街を過ぎ、煙突に、煙に……ぶつかる!
アンリエッタは目を瞑り、コートの中へ顔を埋めた。
その頭を少し抑えて、グレーズはペロリと唇を舐めて、細長い煙突に足の裏をくっつける。そのまま下へ向かって……垂直に、煙突の側面に沿って勢いよく滑った。
「ひゃっふーーいっ! うぉっ!」
分厚いはずの靴底が摩擦で熱を溜めてしまう。グレーズは煙突の中腹で足を踏み出した。そこからまた飛び、勢いを収縮させて着地すべく、タタンっと飛び跳ねる。
「っとと」
白いプリムラの花壇が前方に現れる。
すぐさま急停止。靴底が磨り減っていく感覚が足裏に伝ったが、グレーズはお構いなし。
くるりと方向転換し、背の高い建物の間を縫って走った。
「アンリエッタ、もう大丈夫だよ」
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