1件目:馬鹿と天才は紙一重

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 あんなにも派手に空中大移動をやってのけても息切れ一つしていない。 「グレーズ、ちょっと、勝手に入っていいの? 怒られたら……」 「え、だってここ、無人工場だよ。ロボしかいないんだから、怒られやしないよ。人には」  あっけらかんと言い、グレーズは工場の中へ入った。 「お邪魔しまーす! ジェニーを迎えに来ましたよー!」  緊張感の欠片もない安穏とした声に、アンリエッタはヒヤヒヤ。グレーズの陰に隠れて中を窺う。  そこは、確かに無人で、人型や車型の機械がひしめく開けた場所だった。今日は休みなのか、何一つ稼働していない。 「本当にここに、ジェニーがいるの?」  ひっそりとした中でそびえる機械にアンリエッタは恐怖の顔色を浮かべている。一方、前を歩くグレーズはステップを踏むようになんだか楽しげだ。 「エディの才能は一流さ。彼が言うんだから間違いないよ」 「その、エディって人も才能を持ってるの?」 「うん。まぁ、僕らは『4番街のアンベシル』とか言われてるけどね、この才能だけは誇りを持ってるよ……さて、と」  一通り、ロボを見回ったグレーズは工場の中心で立ち止まった。そして、おもむろに腕を捲った。 「面倒だから、全部壊しちゃおうか」  にこやかにとんでもない発言をする。     
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