1件目:馬鹿と天才は紙一重

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 アンリエッタは開いた口が塞がらず、ただただ呆然とした。 「な、何を言って……怒られるわ!」 「大丈夫、大丈夫。アンリエッタは怒られないから」 「でも、グレーズは怒られちゃうじゃない!」 「それはまあ、仕方ない……でも、ジェニーを見つけるって約束したからね。ちゃんと守るよ」 「そんな……」  アンリエッタの制止を払い、グレーズは手近にあったロボに拳を奮った。  大きな音を立て、脆く崩れていくロボ。その衝撃に、工場の奥から息を呑む音がした。 「さあ、僕は本気だよ、泥棒さん。さっさと出てきた方が身のためだぜ」  そう声高に言い、更にロボを破壊する。殴る、蹴る。それだけでガラガラとロボは鉄クズへ還っていく。 「いい加減に出てきなよ。ジェニーを返せ」  誰に言っているのか、泥棒か。アンリエッタには姿が見えない。しかし、グレーズは存在を察知しているらしい。  やがて、何体目かのロボが破壊された時、突然に手を叩くような音が響いた。 「分かった、分かった。降参! クマは返そう! でも、宝石だけは返さない。それでいいかい? 探偵さんよ」  若い男の声が慌てたように言った。しかし、やはり姿はない。     
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