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アンリエッタは開いた口が塞がらず、ただただ呆然とした。
「な、何を言って……怒られるわ!」
「大丈夫、大丈夫。アンリエッタは怒られないから」
「でも、グレーズは怒られちゃうじゃない!」
「それはまあ、仕方ない……でも、ジェニーを見つけるって約束したからね。ちゃんと守るよ」
「そんな……」
アンリエッタの制止を払い、グレーズは手近にあったロボに拳を奮った。
大きな音を立て、脆く崩れていくロボ。その衝撃に、工場の奥から息を呑む音がした。
「さあ、僕は本気だよ、泥棒さん。さっさと出てきた方が身のためだぜ」
そう声高に言い、更にロボを破壊する。殴る、蹴る。それだけでガラガラとロボは鉄クズへ還っていく。
「いい加減に出てきなよ。ジェニーを返せ」
誰に言っているのか、泥棒か。アンリエッタには姿が見えない。しかし、グレーズは存在を察知しているらしい。
やがて、何体目かのロボが破壊された時、突然に手を叩くような音が響いた。
「分かった、分かった。降参! クマは返そう! でも、宝石だけは返さない。それでいいかい? 探偵さんよ」
若い男の声が慌てたように言った。しかし、やはり姿はない。
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