1件目:馬鹿と天才は紙一重

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「おいおい。聞いた手前、こう言っちゃなんだが、探偵が依頼内容をべらべら喋っていいのかい」 「え? あぁ、いーのいーの。だって、エディが僕に回した依頼だよ? 簡単、楽ちん、うっかり喋ってもなんとかなるやつに決まってる」  楽観的に言い、更には鼻で笑う始末。これにはパン屋の親父も失笑だ。 「それより親父よ。僕を呼び止めたからには、分かってるだろうね?」  ずずいっと親父の鼻先に詰め寄るグレーズ。にやりと口の端を横へ伸ばす。  親父は眉をひそめて、「ちょっと待ってろ」と店の中へ引っ込んだ。  ガラス窓越しの店内には、焼きたて熱々のパンが並んでいる。グレーズは、にこにこと小麦の香りを嗅いでいた。 「ほれ、もってけ。どうせ、飯食ってないんだろ」  親父はバケットの端っこを切り落としたものをグレーズに投げて寄越した。  見事、空中でキャッチする。 「ひゃっほい……あれぇ? これだけぇ? ハムとチーズは?」 「走りながら食えんのかよ……でも、まぁ、そう言うだろうと思って」  親父は腰に巻いたサロンのポケットから、カットしたチーズとトマトを取り出した。それをすぐに奪い取る。 「わりぃな、それで勘弁してくれ」 「充分! ありがとー!」  グレーズは真っ赤に熟れたトマトを見せて笑う。     
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