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prologue
少しだけ、ほんの少しだけ爪先が当たっただけだ。
それなのに、どうして、
「なぁんでぇぇえええええええっ!?」
愕然。唖然。その奥では騒然。
レンガ造りの建物が、地響きを上げて崩れようとしている。その元凶は、顔を真っ青に目を大きく見開いていた。
「おい、何やってる、グレーズ!」
眼下では驚きと怒号が混じった声が。しかし、今や建物は砂埃を巻き起こして地面へとめりこんでいる。どうしようもない。
グレーズは金髪を風に晒して、塔のてっぺんから恐る恐る眺めていた。
――ど、どうしよ……
まさか、こんなことになるとは思わなかった。
レンガがあんなに脆いとは思わなかった。
飛ぶために、ほんの少し足場にしただけなのに……
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