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家の前でタクシーが止まり、何故か彼も一緒に降りる。いつもならそのまま帰って行くのにタクシーを待たせたままで。
「加藤さん?」
「大事なことまだ言ってなかったから」
「えっ」
「誕生日おめでとう」
今日一番欲しかった言葉を貰って、私のもやもやが全部消え去った。
「お、覚えてくれてたんですか」
一人感動している私の顔を加藤さんがのぞき込む。
「自分の彼女の誕生日くらい覚えているって。ごめんな、一緒に祝ってやれなくて。この埋め合わせはちゃんとするから」
「加藤さん」
「ん」
自分の気持ちを伝えずには、いられない。
「好きです」
笑みを浮かべるだけで何も答えてくれない。それでも良いと思うのは、私が加藤さんを誰よりも大好きだから。
「お休み、花」
「お休みなさい」
私は、単純だ。
ちょっと優しくされただけで喜んでしまう。そして加藤さんもそのことを分かっているんだ。
ずるいよ、加藤さん。
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