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「……治った……」
ヨウちゃんが息をはいた。
「ホントだっ! な、治ったっ! 治ったよっ! すごい! 鵤さん、ありがとうっ!! 」
「いやいや。わたしも、ホッとした。だがね、綾ちゃん。用心しなければならないよ。マロウの液剤は、痛み止めのようなものだ。風邪で言う『ウィルス』を、体から追い出したことにはならないんだよ」
「……妖精のつかう悪い魔術から、身を守ることはできる。でも、魔術をつかう妖精自体をどうにかしないかぎり、問題を完全に解決したことにはならない……ってわけか」
ヨウちゃんの眉間にまた、ぎゅっと深いシワが寄る。
「考えるのはあとあと! ね、早く、この子たちも薬で治してあげよう!」
あたしは黒い妖精をひとり、拾いあげた。
ごわごわと硬い。棒切れみたい。ちぢれたショートヘアも、服のかわりに体に巻いた葉っぱまで、真っ黒。
この子、赤毛だった男の子だ……。
こないだは、ふくらはぎに、ちょっとアザがあっただけ。
なのに、どうして……。
ヨウちゃんが、マロウの液剤を人さし指の先にこぼす。その指先で、黒い妖精の肩にふれる。
「わっ!? 」
ヨウちゃんが、人さし指を引っ込めた。
黒い顔の中で、妖精の目が、青く見開かれている。
……え?
な、なに……?
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