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「……ヨウちゃん……」
ヨウちゃんって、いつもカッコつけてクールなふりしてるけど、ビビリのヘタレ。
ビビリな人は、物事を先の先まで想像して、自分の頭の中だけで、どんどん怖くふくらましていっちゃう。
だから、なんにも考えない人の何十倍も、物事が怖くなる。
「そんな思いつめないでも、へ~きだよ。だってもう、アザは、鵤さんの薬で治ったじゃん!」
あたしは肩に力を入れて、妖精の羽を引っ込めた。
「だから、マロウの液剤は……痛み止めと同じだって……」
「それでもさ。しばらくは、アザが消えてるってことでしょ? その間にきっと、なんか解決策が見つかるよ」
へらっと笑ったら、肩までのびる髪の、頭のてっぺんで、ひとふさだけとびだしてるくせっ毛が、ぴろんとゆれた。
これ、「アホ毛」。
アホっ子の頭にはえる毛だから、アホ毛。
アホっ子は、細かいことなんか、気にしないっ!
「それより、ヨウちゃん! きょうは何月何日かわすれてない?『あけましておめでとう』の日だよ? 『ハッピーニューイヤー』だよ? せっかくふたりでお出かけしてるんだから、ついでに初もうで行こうよ~!」
「おい、綾! なにを能天気にっ!」
右手をのばして、ヨウちゃんの左手をにぎって。すたすた、登山道を歩きだす。
怖いよ?
これからのことを考えたら、あたしだって、不安で、胃がきゅ~ってなっちゃうよ?
だけどさ。
今ここに、あたしがいて。ヨウちゃんがいて。
手をつないでいられる。
それが、なにより大事じゃんっ!
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