69人が本棚に入れています
本棚に追加
「綾。なにふたりに、エサばらまいてんだよ」
向かいの席から、真央ちゃんがあたしをにらみつけてくる。
「エサじゃないもん。これにはいろいろわけがあるんだもん」
「にしても、どっちの作品も、クオリティーの低さが際だってるな~。幼稚園児の工作レベルだぞ。あれは、いらないな~」
グサ、グサ、グサっ!
真央ちゃんはズケズケ言っちゃうところが、気持ちいいんだけど。
こ、これ、ちょっとキツすぎ……。
「まったく。真央は、ちっともわかってないね。うまいとかヘタとかじゃないんだって。綾ちゃんがつくってくれたものなら、あの男どもは、なんだってうれしいんだって。ね~、綾ちゃん」
「え~ん。有香ちゃん~っ!! 」
「有香は、綾をあまやかしすぎ」
その間にも、教室の前と後ろで、せめぎあいはつづいてる。
「まぁな。チャチャっと絵づけくらいなら、数分で終わるしな。義理プレにはちょうどいいかもな」
「なんだよ~。そんなの、いっしょうけんめいに絵を描いてくれた和泉にしつれいじゃん~」
「オレの場合は、いっしょうけんめいに、布を切るところからだからな。やっぱ、手間がかかってんな~」
「しかし、心のせまいカレシだな~」
真央ちゃん、ため息。
「もうっ! こんなへたっくそなボロキレ、はずしちゃいなよっ!! 」
横からリンちゃんの手がのびてきて、ヨウちゃんの本を引ったくった。
「わっ!? な、なにすんだよ、倉橋っ!? 」
「わたしが、もっといいブックカバー、つくってあげるっ!」
ヨウちゃんがカバーを守ったひょうしに、本だけはずれて、ゆかにゴトン。
「あ~っ!! 」
さけんだのは、あたし。
瞬間的に立ちあがっちゃったら、背中でイスがガタンとたおれた。
真央ちゃんと有香ちゃん。だけじゃなくて、リンちゃんも誠も、ヨウちゃんまで。クラスのみんながきょとんと、あたしを見てる。
だ……だって……。
本にはきっと、「妖精」ってついた、イタイタイトルが書かれてるんだよ?
あたし、それを隠すためにブックカバーをつくったんだもん。
どうしよう! ヨウちゃんが、みんなからドン引きされちゃうっ!
最初のコメントを投稿しよう!