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放課後。
「バイバイ~」とか「さよなら~」とか「またな」とかが、とびかう教室で。
ランドセルを背負っていると、「中条君」って、声がきこえてきた。
ふり返ると、リンちゃんが、一番後ろの席のヨウちゃんの前に立っている。
「大河原先生が呼んでたよ。『理科室に来い』だって」
「……え? 理科室? なんでオレが? オレ、べつに、理科係じゃないし。理科室つかった実験も、このごろないけど……」
ヨウちゃんはランドセルをかついで、眉をひそめてる。
「さ、さぁ? わたし、知らない。わたしは伝えるように言われただけだから」
ツインテールを舞わして、リンちゃんはぷいっと、ヨウちゃんから顔をそむけた。
スタスタと大またで、教室から出ていく。
わ……寄せつけないオーラ全開……。
「リンってさ……」
女子たちのひそひそ声がきこえてきた。
「私立、落ちたんだって」
「親に『ぜったい受かれ』って、言われてたらしいじゃん」
「リン、性格キツイから、きょう一日、怖くて話しかけられなかったよ」
「わたしも~。ちょっとでもふれたら、キレられそうだったもんね~」
こういうのって、あたしがなんにもしゃべんなくても、けっきょく、クラス中に広まっちゃうもんなんだね。
「みんな、影口はやめようよ」
青森さんが制してるけど、いったん火がついちゃったら、女子の集団はとめられない。
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