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「そんなこと言ったって、紀伊美だってさ~。たまにつかれない?『なんでいつも、リンに合わせてあげてんだろ』って、思うときない?」 「だ、だから、そういう話は……」 「あ、わたし、ある~」 「わたし、わたしも~」 「紀伊美も、ひとりで受かってよかったじゃん。リンといっしょだったら、中学生になってまで、リンの言いなりだよ?」 「そ、そんなっ!!  わたしは、言いなりになんか、なってるつもりはっ!」  青森さん、顔を真っ赤にして反撃してる。だけど、女子たちはきいてない。 「中条君のことだってさ~。正直言って、『いつまで、くっついてんの?』ってカンジだよね? 和泉さんも、あんなにベタベタされたら、イヤでしょ?」  ぎゃっ! とつぜん、あたしにふられてもっ! 「あ、あたしは……えっと。や、ヤだけど……。でも、こういう悪口も、イヤで……」  オタオタしてたら、ヨウちゃんが、あたしの席までやってきた。 「綾、オレ、これから理科室に行って来る。夜に電話するから」 「……でんわ?」 「電話で話すくらいなら、もんくないだろ? どうがんばっても、オレは、おまえに手を出せねぇ距離にいるんだから。じゃあな、かならず出ろよ」 「う……うん……」  ハァと、ヨウちゃん、ため息。肩をすぼめて、廊下へ出ていく後ろ姿、心なしか小さい。  ……ごめんね。  羽を切ること。  ヨウちゃんなりに、悩んで考えて、話してくれたってことは、わかってる。  そういえば、ママ、言ってた。 「お互いの気持ちを大切にして、自分がどう動くかを考えていってほしい」って。  あたし今……ヨウちゃんの気持ちを、大切にしてる……?
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