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「き、き……紀伊美~……っ!! さびしいよ~。わ、わ、わたしも紀伊美といっしょの中学行きたかったよ~っ!! 」  リンちゃんが泣いてる。ほっぺたを真っ赤にして、鼻水まで出して。  青森さんも、何度も自分の目元を手でぬぐってる。 「リン、電話するよ。ラインもするよ。近所なんだから、外歩けば、すぐに会えるよ。中学に入ってからだって、いっぱい話そうっ! わたしたち、ずっとずっと、友だちだよっ!! 」 「うん。うんっ!」  まぶしい……。  ふたりの涙の粒は、キラキラの宝石みたい。  こんなまぶしい世界……あたしみたいな真っ黒人間には合わない……。 「あれ? 和泉さん、顔どうしたの?」  青森さんがまばたきした。 「顔が黒いよ。まさか、墨汁かぶっちゃった?」  ヨウちゃんが、ハッとした顔になって、自分のモッズコートを、あたしの頭の上にかぶせた。 「あ、あ~。そうみてぇ。じゃあな。オレは、こいつにつきそってやるから。ふたりとも、理科室の電気消して帰れよ」  まるで、警官につれられた犯人。ヨウちゃんに頭からコートでおさえられて、あたし、廊下に導かれる。 「……あ。そうだ、倉橋」  理科室のドアの前で、ヨウちゃんは立ちどまった。 「倉橋さ。オレに、綾のどこが好きなんだって、きいたよな。 綾は、笑うときは、たいてい、腹の底から笑ってる。オレに媚びて、気に入られたいから笑うんじゃなくって、自分が笑いたいときに、笑いたいから笑う。 あたりまえのことなんだけど、オレはちょっと前まで、わすれてた。カッコつけて、おまえらにキャーキャー言われることばっかり、気にかけてた」 「……中条君」 「倉橋、おまえはどうなんだ? 自分が腹の底から笑えるとき、となりにいてくれる相手は、だれなんだ? その手を、かんたんにはなすなよ」
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