仙人掌

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 翌日、俺は彼女に言われた通り、仕方なしに一人で帰り支度をする。玄関脇の多目的ホール前に差し掛かった時、中から賑やかな音声が聞こえてきた。大声での会話に()め事でもあったのかとぼんやり考えながら外履きのスニーカーに片足を納めた矢先、耳が拾ったのははっきりとした滑舌(かつぜつ)の芝居の台詞。  素早く両足の靴を整えて玄関を出て、吸い寄せられるように屋外からそちらへと足を運ぶ。多目的ホールの窓はすべて全開で、中で行われている演劇部の稽古の様子が玄関前の広場から一望できた。  数いる部員たちの中に早苗の姿を見つけ、我知らずうっすらと微かに口端が上がる。ジャージ姿で、額に汗しながら仲間たちとともに(ほが)らかに練習に励んでいる彼女を、眩しげに目を細めて見守った。  と同時に、ひどく喉が渇いてくる。  ――まただ。またこの感じ。まるで彼女の成分を得て熱の(とも)った身体が、その熱によって(かえ)って干からびて枯渇(こかつ)するかのような――。
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