招き

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 自分達が住む県に戻ってきた彼らはカラオケの前にファミレスで腹ごしらえを済ませ、フリータイムでカラオケを堪能し、カラオケ店の前で解散した。じゃんけんに負けてレンタカーを借りさせられていた楠田は、このまま車を返しに行こうと車を走らせる。 『石碑しかないガランとした広場みたいだったって言ってた』  一人になった途端、楠田の耳の奥で沢木の声が再生された。一度気になるともう、どうしようもなかった。 「今日一日はレンタル可能だし。まだ、時間あるよな。」  行って、写真でも撮って、トンボ帰りすれば間に合うと頭の中で計算した楠田は、方向転換する。宵の口の町は何処か不気味だった。  沢木と田中は方向が同じだったため、二人で帰路に就いていた。帰路と言っても沢木はバイト先に向かっていたのだが。  沢木のバイト先のコンビニ店の裏に、二人で他愛ない話をしながら回り込むと 「お、沢木!」  通用口から出てきたバイト上がりらしい件の先輩と遭遇した。沢木はニコニコしながら先輩に駆け寄った。 「先輩、俺、あそこに行ってきました。先輩が都市伝説を体験した所。」 「は?お前も物好きだな。何?その帰りか。」 「はい。こいつと、もう一人と一緒に。」  そう言って親指で指された田中は会釈する。先輩も会釈を田中に返し、そして呆れたように沢木を見た。 「遊び半分にあんな所に行くなよ。あそこは慰霊碑が建ってんだぞ。」 「はあい。そういえば、この場にいないもう一人が変なことを言っていて。」 「変なこと?」 「何か電車のオブジェが見えたとか何とか……」  先輩が思案するように顎に手を遣り、眉間に皺を寄せる。何かまずいことを言ったのかと焦る沢木に先輩が質問を投げかけた。 「お前、あの都市伝説をちゃんと調べたか?」 「いや、先輩に聞いただけしか。」  沢木が田中を振り返りアイコンタクトを取る。その合図を誤ることなく受け取った田中はフルフルと首を横に振った。
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