すべてがはじまるその前に

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★ ★ ★ ★ ★  最近、男子どもであつまると、「うちのクラスで、一番カワイイ女子は、だれだ?」って話になる。 「やっぱ、倉橋(くらはし)っしょ」  って言ったのは、大岩(おおいわ)。体がゴツゴツとでかくて、身長もクラスで、オレの次にでかい。  まぁ、あの筋肉のつきのよさには、オレも負けるけど。  オレの場合、身長はあるけど、筋力は小六の平均値。で、「やせ型」。 「倉橋はさ~、猫目がいいんだよな~。なついたと思ったら、つきはなされる感じがたまんね~」  大岩、目尻をさげて、ニタニタ。 「オレ的には、永井(ながい)も捨てがたいな」  杉田(すぎた)は、教室の廊下側の席に目をやった。  そこの席に、女子たちが三人あつまっていて、昼休みをつぶしている。  一番背が高いのが、永井。黒縁メガネをかけ、髪をふたつにむすんで、胸の前でたらしている。 「勉強教わって、『そんなこともできないの?』とかって、見くだされたいね」 「おまえ、どんな趣味だよ……」  ほおづえをついてため息をついたオレを、(まこと)のクリクリ目がのぞきこんできた。 「なぁ、和泉は?」 「……和泉か~」  教室の一番後ろのオレの席にたむろした男子たち、五、六人。う~んとうなる。  みんな眉間にしわを寄せて。腕を組んで。はたから見れば、日本の未来について語り合う若者たち。 「いや、待て。それはないだろ?」  オレだけ、ひとり、笑いたくなった。 「だって、和泉って、なんか、幼稚園児相手にしてる気分にならねぇ? ドンくさいし。なにやらしても、なんもできねぇし。だいたい、あの、頭からとびだしてるアホ毛、見てみろよ」
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