すべてがはじまるその前に

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 あごをしゃくると、みんなは、ふたたび永井たちのグループのほうに目をやった。  河瀬(かわせ)の席を、永井と和泉がかこんでいる。  永井がなにかをしゃべって、和泉がケラケラ笑った。口を横にへらっと開いた、脱力系の笑顔。  その頭のてっぺんに、ひとふさだけ、髪がくるんとそり返っている。  和泉の髪はいつ見てもあんなふう。どうやら、くせっ毛らしい。  マンガやアニメだと、ああいう髪は「アホ毛」って呼ばれている。アホ毛のあるキャラクターは、決まって「アホっ子」。  つまり、和泉にぴったりの髪。 「あいつ、こないだ、パジャマのズボンぬぐのをわすれて、スカートの下にはいて学校来てたらしいぞ。倉橋たちが話してた。そんなんでもいいなんて、おまえらそうとう、守備範囲広いな」 「けど……和泉の母親って、モデルやってるんだよな」  杉田が、ひたいをよせてきた。 「たしかに今は、ガキ丸出しだけど。ああいうのって、大化けするんじゃね?」  大岩までうなずいている。 「な~んだ。みんな和泉がカワイイのに気づいてたんだぁ~。ちぇ~、オレだけだと思ったのにな~」  誠が口をとがらせる。横に広がった大きな耳が、子ザルみたいだ。 「和泉の目って、おっきくてすっごいうるうるだよね。正面切って見つめられたら、オレ、クラっと来ちゃうもん」 「……マジかよ」  なんか、あきれる。  こいつらって、ホント、クラスの女子をよく見てるよな。 「じゃあ、葉児(ようじ)はどんなのが好みなんだよ?」  大岩がじろっとオレをにらんだ。 「――オレは……」
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