32人が本棚に入れています
本棚に追加
「中条くぅ~ん。いっしょに屋上いこ~」
ふり返ると、倉橋が女子たちを引きつれて、オレの席の後ろに立っていた。
「ね、ね。そんなむさくるしい男子たちとしゃべってないで。うちらと話そうよ~」
オレの腕を取って、強引にイスから立ちあがらせる。
「なんだと~。女子ども~」
「くっそ~。葉児のヤツ、倉橋を取りやがって~」
女子たちにつれられて、廊下に出るとき、大岩の声がきこえてきた。
「ってか。葉児なら、その気になれば、だれだって落とせるんじゃね?」
……まぁ、そうかもしれない。
琥珀色の髪。琥珀色の目。
イギリス人だったっていうとうさんは、オレが四歳のときに亡くなったから、思い出もなにものこってないけど。
この顔にしてくれたことには、かなり感謝している。
廊下に出ると、真夏とかわらないくらいキツイ日差しが、窓からほおを照らした。
九月に入ったけど、最近の暑さからしたら、まだ「夏」と言ってもいいほどだ。
「ねぇねぇ。さっき、中条君、男子たちと、どの女子がカワイイか話してたでしょ~?」
廊下を歩きながら、倉橋がするっと、オレの腕に、自分の腕をからませた。
大岩が「カワイイ」と言うのもうなずける。パッチリの猫目。ふわふわと長いツインテール。太ももでゆれるミニスカート。
「中条君は、うちのクラスで、だれが一番カワイイと思う?」
倉橋の顔には「わたしでしょ」と書いてある。
「……さぁな」
オレは無表情のまま、窓の日に目を細めた。
女子はたしかにカワイイとは思うけど、だれが一番とか考えたことがない。
考えなくても、女子たちは勝手に、オレのところに寄ってくるから。
最初のコメントを投稿しよう!