すべてがはじまるその前に

9/16
前へ
/16ページ
次へ
 理科の実験が苦手って理由だけじゃない……。  嫌われてる……。  オレが……?  ――なんで? 「中条君、さっきの実験大変だったね~」  教室の自分の席にもどると、青森が話しかけてきた。 「きいてよ、リン~。和泉さんがね~。また、すっごいお荷物でさ~」  青森が倉橋に、一部始終を伝えはじめる。 「え~っ!? ウッソ~っ!?」とか「和泉さん、サイアク。チョーめいわく~」とか、声をあらげる倉橋。 「そのとおりだ」と思いながらきいていると、廊下側の河瀬の席をとりかこんでいる和泉たちが視界に入った。  こちらの席をふり返り、倉橋の顔をチラチラと気にしている。 「も~、ホンット、これ以上めいわくかけるなら、和泉さんって学校に来なくてよくない?」  倉橋の声に、和泉はきゅっと首をすくめた。目をきつくつぶって、両耳を手でふさぐ。  ……そうか。  あいつにとって、倉橋や青森の会話は、「自分の悪口」でしかないんだ……。  あいつ目線で見れば、倉橋や青森は、オレの取り巻き。  つまりオレは、自分の悪口を言う人間の「ボス」。  だからオレのことが、嫌いってか……?  いろいろ考えていたら、頭が痛くなってきて、オレはつくえの上につっぷした。  ……なんだ、それ。くそめんどくさい。  だったら、悪口言われるようなこと、しなけりゃいいだけだろっ!?
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加