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気がつけば側にいた従者は、新進の貴族だった。高祖父はアツミス海を越えた隣国ネスマラの内乱を逃れ、グラジに辿りつき身を立てた。それが貴族になったのは、異国の知識と人脈を備えていたからで、それが五代続いてやっと王子の側に寄ることを許された。
ちょうど年頃も合うということで、ミンリは王子の遊び相手に任じられた貴族の子息たちの一人だった。ヒナゼは誰よりミンリに懐いた。優しく、他の子供たちと違って自分の側から一歩下がって、微笑む彼に興味を持ったのが始まりだ。ネスマラ系の浅黒い肌は、時に侮蔑を受ける。それに冷静に対処する彼を尊敬した。成長し、彼が男らしい顔を見せることも知った。
緩やかに恋に落ちていき、告白をしたのは半年前。命令ですか、と問われた一瞬は傷ついたが、命令じゃないが、考えておいてくれと胸を張ったときには口説き落とすと決めていた。
膠着状態に、ヒナゼは苛々と爪を噛んだ。その手を、そっとミンリが取る。
「爪が傷みます」
手の温みにうっとりとしていると、返された手にそっと菓子を載せられる。おしゃぶり代わりに子供に与えるものだ。
「噛むならこちらを」
眉間に皺を寄せて、ヒナゼは口に咥えた。板状のそれは、噛むとミルクの味がじわりと沁み出す。
案外と美味い。
はむはむと噛みながら、上目遣いでミンリを窺う。
「昨夜、私がお前のベッドに裸でいた理由を聞かないのか?」
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