133人が本棚に入れています
本棚に追加
サリアナが差し出した箱を、ミンリが受け取る。包みをほどいて、ヒナゼの前に広げてみせた。立て襟は詰め過ぎず、僅かに喉元で広がっている。シャツの袖は真っ直ぐで、肩に丸みはない。細身のシルエットは、新しい。触れてみれば、縫製もしっかりしていた。
「それと、こちらは本日お目通りいただいたお礼に、殿下にお持ちいたしました。日本という国の花嫁の絵です」
ミンリが広げた絵は、薄い布地に描かれたものだった。雪の中、傘を差しかけられた女が振り返り、微笑んでいる。全てが白い服だ。襟と袖の内側に朱色が覗くのが、艶めかしい。
「美しいな…。こういう服は作れるのか?」
「もちろんですわ」
即答したサリアナに割りこむように、ミンリが声を上げた。
「お待ちください。これは異国の、しかも花嫁のドレスですよ?」
今度こそ鼻で笑って、サリアナが微笑んだ。百合の香りが立つような笑みだ。
「あら、頭の固い方ですのね。花嫁になれない女がいるなら、花嫁になる男がいたって構わないと思いません?」
しれっと答えたサリアナに、ミンリが絶句した。ヒナゼは吹き出し、声を上げて笑った。
「気に入ったぞ。ミンリ、彼女に決めた」
笑い続けるヒナゼに、ミンリは眉を八の字に下げた。サリアナはその場に叩頭し、笑んだ顔を伏せた。
最初のコメントを投稿しよう!