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それはまだ神と人間がともに暮らしていた時代の話しだ。
男はかくあるべしと決めてかかる頑固一徹な性格の人間がいるように、神の中にもまた、世の中にあるものをなんでも決めつけてしまう神がいた。
「決めつけの神」として今も世界のどこかであがめられているその神は、動かないものを石だと決めつけ、広めの水たまりはすべて海だと決めつけた。
そして世の中で最も美しいものは嫉妬の花だと決めつけていた。
じっくりと養分をため込み、数十年に一度花が咲くため「奇跡の花」とも称されるその花は、思い立ったら行動あるのみと決めつけている決めつけの神をもってしても未だにその目で見ることはかなわず「噂の神」からの噂話で耳にしたことがあるのみだった。
そんな奇跡の花をどうしてもこの目で見てみたい決めつけの神は、知り合いの輸入雑貨の神から嫉妬の種を入手し、自ら育ててしまおうと思い立った。
しかし奇跡の花と呼ばれる嫉妬の花は、水だけで成長するその辺の植物とはわけが違う。嫉妬を養分にして成長する特殊な性質を持った花なのだ。
決めつけの神も、種から嫉妬の花を育てるためには水だけでは足りないことは承知のうえだった。それでも決めつけの神が嫉妬の種を育てられると確信したのは、近所に「妬みの神」が住んでいたからだ。
普段から妬みしか口にしない妬みの神の嫉妬を聞かせれば、嫉妬の種はきっとすぐに成長し、大きな花を咲かせてくれるだろうと決めつけた。
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