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『1 好きな人の席に座ったら、まずは準備してきたものを机の上に並べましょう』
サイトに書いてある通り、私は家から持ってきた道具を並べた。と言っても、藁人形とか釘とか、呪いに使うようなものじゃない。
真っ白なコピー用紙一枚と、ハサミと、ボールペンと、セロハンテープ。買い物に行かなくたって揃えられるものばかりだ。
『2 次は、画像の通りにコピー用紙を切り抜こう。そして、真ん中に伝えたいものを書いてね』
スマホの画面を見ながら、私はコピー用紙をハートの形に切り抜いていった。あんまり大きくすると恥ずかしいから手のひらに収まるくらい。
切り終えると、ボールペンでハートの真ん中に『声』と書いた。すぐに緊張してしまうせいでうまく話せない私だけど、だからってなにも考えていないわけじゃない。私はちゃんと心に想いを持っていて、伝えたい言葉があって、それを声に出せないだけ。
でも、このおまじないがあれば私の想いを声にして伝えることができる。ずっとあなたのことが好きでした、私と付き合ってくれませんか、って。
『3 最後に、セロハンテープを使って切り取った紙を机の裏に貼ろう。見つからないように、教科書を出し入れするときに破れちゃわないように、しっかり奥のほうに貼り付けようね』
スマホの明かりを頼りにしながら、彼の机の裏にハートの紙を貼った。簡単に取れないように何枚も何枚もテープを貼って、それが終わることには十分が過ぎていた。
『4 これでおまじないは終わり。あとは、じっとタイミングを待ってあなたの想いを伝えよう』
おまじないの四つの手順はすべてやり終えた。安心した私は、誰かに見つかってしまわないよう気を付けて家に帰った。寝ている両親を起こしてしまわないようにゆっくりと階段をあがり、自分の部屋に戻ると布団に潜り込む。ずっと緊張していたせいでパジャマに着替える気力もなく、すぐに夢の中に落ちていくのを感じた。
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