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麻里の返事より早く、茂は麻里の薄い夏布団の上から麻里を抱きしめ唇にキスをした。
「抱いて……」そのまま麻里の浴衣を剥ぎ取り苦も無く麻里の中に入っていた。
伸ばした両手で裸の麻里の尻を掬う様にして引き付け茂は根本まで麻理の奥に侵入した。
「ふぁー」
深い深呼吸と高いよがり声が吐息と共に吐出された。待ち焦がれていた快感にうめく様に反応する麻里の口を麻里の液体で濡れた手指で塞ぎ声を殺した。
「痛っ、た、た」麻里は俗にいう『巾着』だった。茂は締められて余りの強さに痛みさえ感じた。暗闇のなかで大声で善がり声を発する麻里の口元を手で覆いながら麻里の強烈な筋力に音を上げた。
人妻と経験の無い未熟な若者が、突然タッグ・マッチを組んだようなアンバランスなラブ・アフェアだった。あれだけ恋焦がれた人妻との情事が、こんなに簡単に結ばれて、呆気ない、複雑な心境だった。
強い痛みの中で無我夢中で麻里を抱き、瞬く間に果てた。緊張が退いて、睡魔が茂に迫ってくる。茂は温かい麻里の太腿に手を置いて寝入った。
翌朝麻里に起こされて二人は美濃の名所である養老の滝を見に出掛けた。高さ三〇メートル、幅四メートルの、岩角を打って流れ落ちる水は清冽だったが、茂には麻里の意図が解らなかった。茂にはこの観光の目的が判らなかったが睡眠不足で生あくびを連発する茂を連れて、麻里は茂との思い出を作りたかったのかもしれない。茂にとっては只の苦行であったが……。
生活力もなく、一般常識もない未成熟な茂には、麻里を浚って奪う野心も力もなかった。ただ動物的な雄の本能だけがあった。自分の可能性と人生に漠然とした自信は持っていたが、具体的な戦略も戦術もなく、盛りのついた唯の雄犬だったのである。
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