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時計が深夜二時を指す頃には、もう同窓会はお開きになっていた。俺は隣の部屋で寝かせた藤岡が散らかしたままの缶ビールからつまみの袋やらを片付けており、まだまだ体を熱くするアルコールのせいで頭がぼんやりとしていた。
動くのも面倒になって、畳の上にごろんと寝転がる。
すると、浮かび上がってくるのはあの日の思い出。四人で夜の学校探検をした日の、次の日の話。
俺たちは学校に忍び込んだことで両親や教師から死ぬほど怒られた。
不可解なのは、俺たちが忍び込んだことに気が付いた教師だ。七十を過ぎてるのに人手不足だって理由で採用されていたあのじいさん教師は、『当直のために学校に泊まっていたら下の階から子供の悲鳴が聞こえてきた』と言っていた。でも、それはあり得ないことだ。なぜなら、当直室があるのは教材準備室と一年から三年の教室がある西校舎じゃなくて、四年から六年の教室しかない反対側の校舎。
つまり、俺たちが本当に調べたのは西校舎じゃなかった。明るい時間帯にしか来たことがないせいか、恐怖のせいか校舎を間違えて入った俺たちは、教材準備室なんてないはずの校舎で真っ白なプレートを目撃し、逃げ帰った。
その事実を知るのは、じいさん教師から直接話を聞いた俺だけだ。他の三人に話そうかとも思ったが、これを伝えると嫌なことが起きそうで隠し通したままにした。
あの日、俺たち四人は本当に存在しないはずの教室を見てしまったのだろうか。四つ目の教室、あの学校にないはずの教室を。
じいさん教師の勘違いだと思いたいが、そう信じ込むにはあまりにも恐怖が強すぎた。
既に俺たちが通っていた校舎は合併によって取り壊されており、じいさん教師も何年か前に死んだから本当のことはわからない。
でも、そのほうがいいような気がした。
もしもあの日見た教室の真相に気づいてしまったら、どこか、遠い場所に連れていかれそうな気がしたから。
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