四つ目の教室

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「なぁ藤岡。そろそろ教えてくれよ。残りの二人をしっかり連れてきてるってどういう意味なんだ? 相良と金城は先に実家のほうに帰ってるってことか?」 「せっかちになるなよ。今から準備するから、テレビ借りるぞ」  そう言って、藤岡は旅行鞄から真っ黒な機械を取り出した。両手で軽く持ち上げられるほどの大きさのそれに何本もの線をつないでいく。テレビと真っ黒な機械を接続しているようだが、それがどういう結果を生み出すのかよくわからなかった。  数分もしないうちに作業を終えた藤岡は、テレビのリモコンと黒い機械の側面についたツマミを操作していく。 「よし、つながったぞ」  その言葉を皮切りに、テレビにはざらざらとした砂嵐が流れた。それは徐々になくなっていき、テレビ画面にはっきりと映ったのは見覚えのある二つの顔。 『よう吉村、見えてるか~?』 『あっ、お前らどんだけ缶ビール用意してんだよ。こっちにも寄越せー!』  多少ノイズ混じりだが、スピーカーから流れる声にも聞き覚えがある。 「これ、テレビ電話ってやつか。携帯電話でできるのは知ってたけど、うちに置いてある古臭いテレビでもできるんだな」  感心して息を漏らしていると、藤岡は愉快そうに声をあげた。 「カメラ内蔵式の受信機と出力装置さえありゃ朝飯前だよ。田舎から出りゃこの程度のもんなんざごろごろ転がってんだぞ」  そういえば、藤岡はIT関係の会社に勤めているという話だった。実際に扱うのはプログラムより機械のほうが多いらしいが、俺の知らないところでこんな技術を身に着けていたなんて、田舎の出身とは思えない。
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