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最初の観光スポットは奈美恵イチオシの霧多布岬だった。
岬から見る荒々しい海や、浜中湾越しの奔幌戸(ぽんぽろ)、
貰人(もらうと)の絶壁は圧巻だという。
「あっちにある灯台が、映画「ハナミズキ」の撮影に使われたらしいんだけれど……
私はこの風景の方が好きなのよ。ずっとイギリスの紀行番組や映画なんかで見かける、
有名な観光地そっくりだと思っていたの」
奈美恵が懐かしそうに説明した。
「だったら、その灯台に行けばいいのに……何だか寂しいところね。
私たち以外は誰もいないし、対向車だってなかったじゃない。
本当にここは有名な観光地なの?」
毎度のことながら、梢がぶつくさと文句を言い始めた。
「ほら、看板を見て。向こうにはキャンプ場もあるみたいだし、
夏場ならもう少し賑やかなんじゃないの?」
「な、なんだかサスペンスドラマに登場しそうな場所だね、梢」
小百合が梢の隣にそっと寄り添い前に進む。
「風も強いし、怖いわぁ……早く車に戻りましょうよ」
苛立った梢の声が徐々に高くなっていく。
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