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次の目的地は霧多布湿原だ。湿原センターのカフェでコーヒーを飲むと、
小百合の調子も回復したようだった。
「どうする? 湿原を散策する?」
そう提案するも、またもや梢が渋る。
「奈美恵が指示したから、スニーカーを履いてきたけどぉ……」
皆が一様にスニーカーを履いているが、
機能性よりも見た目で選んだお洒落度の高い代物だった。
それに十月の湿原は花が咲く夏場と違い色味がなく、
人の気配も感じられない寂しい雰囲気だった。
「所々に《谷地眼(ヤチマナコ)》っていうマンホールくらいの大きさの穴、
深さが三~四メートルにも達するくらいの水溜まりがあるの。
いわゆる底なし沼のような状態で、馬やシカでも落ちたら一発でアウト。
絶対に抜けられないだって」
奈美恵が脅すように、大声で谷地眼の説明をし始めた。
次の計画は梢を転倒させて、あわよくば木道から突き落とすことだ。
木道のそばに谷地眼があるとは限らないが、説明を聞けば誰でも震え上がるだろう。
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