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まずはJR釧路駅近くのシティホテルにチェックインして、
大移動で疲れた体を休めた。今夜はホテル近くの洋食レストランで、
釧路市民のソウルフード「スパカツ」を食べる予定だ。
明日から海鮮三昧の計画だから、今夜は軽めのメニューを選択しておいたと、
奈美恵がひと言付け加えた。
「四人ともスパカツで良いわよね」
レストランの席に着くなり奈美恵が同意を求める。
皆が同じものを注文すれば、梢のひと口ねだりは出てこないだろう。
それを踏まえて今夜は「スパカツ」にしたのだ。
旅の最初からあの言葉を聞きたくないがための、苦肉の策だった。
「えぇえ、なんで皆同じなのよぉ。ちょっとずつ色々な味を楽しみたいのにぃ」
案の定、梢が不満げな声を上げた。
どうせ色々の味を楽しむつもりなのは梢だけだ。
三人ともそんな身勝手な特権など、金輪際認めたくなかった。
「だって釧路でしか味わえない名物を食べるために来たのよ。
別の料理を注文したって意味ないでしょう?」
「それはそうだけど……」
「文句はなしよ、梢。皆でスパカツを頼みましょう」
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